マンスリーレビュー

2019年12月号トピックス3サステナビリティ

うわべだけのSDGsと呼ばれない企業へ

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2019.12.1

環境・エネルギー事業本部齋田 温子

サステナビリティ

POINT

  • SDGsの認知度は高まる一方、2030年までの長期計画がある企業は1割。
  • 「SDGウオッシュ」に陥る要因は、長期視点の不足と限定的な取り組み。
  • サステナブル経営への鍵を握るのは、全社を巻き込む意識改革。
2015年9月、国連・持続可能な開発サミットで全会一致にて採択されたSDGs※1。2019年2月に発表されたGCNJ/IGES※2の調査によると、日本企業におけるSDGsの認知度は経営陣の59%まで広がっている。しかし、SDGsに関連した事業の計画策定状況について「2030年までの取り組み計画がある」と答えた企業は、全体の10%にとどまった。

企業におけるSDGsへの取り組みは、既存事業とのひもづけやマッピングだけに終始している場合も多く、「SDGウオッシュ」と非難される事態も出てきた。SDGウオッシュとは、「greenウオッシュ※3」にちなんで付けられた、うわべだけのSDGsへの取り組みを指す。その状態が続くと、企業価値が損なわれる懸念すらある。

なぜ、日本企業がSDGウオッシュに陥るのか。一つは、SDGsが2030年までの長期を見据えた目標だからだ。3カ年、5カ年などのスパンで経営計画を策定する企業にとって、2030年という長期の目標を立てる手法が分からないという声が多い。さらに、SDGsへ取り組んでいる部署が、CSRや環境部門などに限定され、全社的な取り組みまで広がっていないケースも散見される。

一方で、上記課題を克服し、サステナブル経営が評価されている企業もある(表)。業績が悪化し経営危機に直面した丸井グループは、世の中に先駆けてESG※4へ取り組み、2010年代後半、共創サステナビリティ経営を開始した。全社的に「危機感」を共有することで、効率よく進みたい方向へ会社の舵(かじ)をきり、長期的な景気回復と消費者マインド改善の恩恵を受けることに成功した。

SDGsへ全社的に取り組むためには、社員の意識改革が欠かせない。CEOなどトップ層は、世情や競合他社の動きに敏感なためスムーズに進む。しかし、現場の意思決定を担う事業部門などが「自分ごと」として施策を遂行するには、難しいケースが多々ある。収益目標の達成責任を負う本部長などの見ている先は、3年先、5年先だからだ。彼らの意識をいかに変革し、全社を巻き込めるか。これが、自社の取り組みがSDGウオッシュと呼ばれないための「肝」になる。

※1:持続可能な開発目標。2030年を年限とする17のゴールと169のターゲット、232の指標が決められている。

※2:一般社団法人 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)および公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)。

※3:見せかけだけの環境配慮。

※4:環境・社会・企業統治の3要素。

[表]サステナブル経営が評価されている企業