マンスリーレビュー

2019年12月号トピックス6経済・社会・技術

社会課題解決に挑戦するスタートアップの成長を支援

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2019.12.1

オープンイノベーションセンター加藤 美季

経済・社会・技術

POINT

  • INCFビジネス・アクセラレーション・プログラムが年を追って充実。
  • 大企業、官公庁とのパイプを活用してスタートアップの成長促進を後押し。
  • 量・質でアクセラレーターの層を厚くすることが社会課題の解決に貢献。
スタートアップ企業や個人からイノベーションとビジネスで社会課題を解決するアイデアを募って表彰・支援するINCF※1「ビジネス・アクセラレーション・プログラム(BAP)」、2019年は過去5回で最多となる124件の応募があった。第1次・第2次の予選を経て、9月上旬の最終審査会(ピッチコンテスト)で受賞者を決定・表彰した。

BAPの審査は、①社会的インパクト、②事業性、③CEO・チームの能力と体制、の三つを選考基準とする。この中で最も重視されるのが社会的インパクトであり、解決を目指して取り上げた社会課題の深刻さ(着眼点)と、提案されたビジネス・アイデアから期待される改善効果(インパクト)の大きさの組み合わせで評価される。最終審査会では、国内外の有識者・専門家5名で構成する審査員が、鋭い質問を交えて集中的に議論した上で受賞者を決定する。

BAP2019では、最優秀賞を獲得したアクティベートラボ(東京都中野区)、三菱総研賞のBionicM(東京都文京区)※2をはじめ、社会課題の設定や対象となるコアユーザーが明確で、ダイバーシティ社会の実現に寄与するビジネスの提案があった(写真)。年を追って、応募の量だけでなく質も着実に前進している手応えが感じられる。

BAPのもう一つの特徴は、プログラムの途上、事務局を務める当社の研究員がそれぞれの専門領域で予選通過者の相談に乗り、提案内容の改善に向けたメンタリングを提供することだ。さらに、最終審査終了後も、受賞者を中心にINCFの会員ネットワーク(大企業、官公庁、大学など)を活用して、有力なビジネス・パートナーとのマッチングや資金調達支援など、アイデアの熟成、ビジネスの成長を手助けする。

スタートアップの育成には、不足している点を補い成長促進を側面支援するアクセラレーター機能が必須とされるが、日本は、米国などに比べその層が量・質ともまだまだ薄い。INCFと当社は、社会課題の解決に挑むスタートアップをサポートするアクセラレーターの一翼を担い、大きな社会的インパクトを生むイノベーション・エコシステムの活性化を目指す。

※1:未来共創イノベーションネットワーク(事務局:三菱総合研究所)

※2:「ビジネス・アクセラレーション・プログラム2019の受賞者決定」(ニュースリリース、2019.9.9)

[写真]BAP2019のファイナリストおよび奨励賞獲得者