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2020年10月号トピックス2ヘルスケア・ウェルネス

超希少疾患向け医薬品の開発を強化するには

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2020.10.1

ヘルスケア&ウェルネス本部川上 明彦

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 超希少疾患向け医薬品の開発機運が高まっている。
  • 日本では、開発強化に不可欠な患者の参画体制は不十分なまま。
  • 国や企業、市民など社会全体による取り組みで患者の参画促進を。
患者数が1,000人未満の超希少疾患向け医薬品(ウルトラオーファンドラッグ)が注目されている。大部分はまだ治療薬が開発されていない。生活習慣病などマーケットの大きい疾患の新薬開発が難しくなり、世界的な製薬大手は超希少疾患向け新薬開発を強化している。日本の製薬業界にとっても開発体制の強化が急務となっている。

ウルトラオーファンドラッグを含む希少疾患向け医薬品の開発機運は日本でも高まっている。2015年に、難病に関する医療や研究開発を推進する難病法が施行されるとともに、日本医療研究開発機構(AMED)も希少疾患向け医薬品への開発費助成を開始した。国や学界の主導により、患者に関するさまざまな情報を登録するデータベースで、臨床研究・治験の推進への貢献も期待されている患者レジストリや、生体試料を保管・提供するバイオバンクといった研究開発基盤の整備も進んでいる。

だが、開発ペースは米国に比べ鈍い※1。開発には患者の参画が望まれるが、この体制整備(図)が遅いため、承認までに長時間を要していることが一因だ。理由としては、患者会の規模が小さく、十分な情報が患者側に伝わっていないことなどが考えられる。米国では、患者会の連合組織である米国希少疾病協議会(NORD)※2が、臨床研究の情報を患者や市民に提供している。製薬業界や学界とのネットワーキングの場を設けるほか、米食品医薬品局(FDA)から助成を受け、患者レジストリ作成の支援もしている。患者会からの寄付に基づく研究助成によって治療法が確立された例もある。

日本でのウルトラオーファンドラッグ開発強化に向けては、患者への啓発・広報活動などを積極的に行う必要がある。現在の患者会や患者支援団体だけではリソースが十分ではないため、学界や製薬業界、患者会などを結びつける情報プラットフォームを構築したり、希少疾患に関する国際会議の誘致を進めることも有効である。さらに、国による資金助成や、企業・市民などからの寄付を呼び込むべきである。そうすれば、バイオバンクや患者レジストリの構築だけでなく、臨床試験、ひいては承認審査・薬価算定のプロセスへの患者参画が促進され、患者にとっても大きなプラスになる。

※1:2019年までの10年間に日本で承認を受けた希少疾患向け医薬品は116品目と、新有効成分含有医薬品(NME)396品目中29.3%だったのに対し、米国では158品目とNMEの41.8%に達している。    
日本製薬工業協会医薬産業政策研究所(2020年3月)「希少疾病用医薬品(Orphan drug)の開発動向」政策研ニュースNo.59。

※2:National Organization for Rare Disorders。1983年に発足した。

[図] 患者が医薬品開発の各フェーズで参画できる事項

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