具体的には、適切な医療行為がなされていれば感染者数に対する死亡者数の割合は一定範囲で抑えられると仮定し、感染者数と死亡者数の急増期間に着目して各国を分類した。死亡者数が急増しているケースは、医療体制が崩壊の状態(感染者の急増に対応できる医療インフラの量的不足や医療資源の再配分が上手くいかず、キャパシティを超え十分な治療行為などが実施できない)にあるとみなし、一方、急増していないケースは医療提供体制が維持されているケースとみなした。
第一に、感染者数が急増した後に約10日前後に死亡者数が急増している国として、イタリア、スペイン、イギリス、イランがある。これらの国では、感染者数の抑制に失敗し、感染者数に対応した医療提供体制が準備できなかったケースであると考えられる。
第二に、感染者数が急増した後の一定期間は死亡者数の急増を抑制できたものの、その後死亡者数が増加した国として、フランス、ベルギー、スウェーデンがある。これらの国では、感染者数が想定を上回り、感染者の急増に対応した医療提供体制の拡充が間に合わなかったケースであると考えられる。
最後に、感染者数が急増しているものの死亡者数が急増していない国として、ドイツ、ノルウェー、アイスランド、カナダ、トルコ、イスラエル、韓国などがある(形式的にはアメリカもこの類型に該当するが、ニューヨーク等の州ないし都市別の分析が妥当と考えられる)。これらの国では、感染拡大後も医療提供体制を維持し続け、死亡者数の抑制ができたケースであると考えられ、上述の死亡者数の抑制という最終目的のために、示唆が得られるケースと考えられる。
3類型それぞれの事例として、イタリア、フランス、ドイツにおける、感染者数の急増以降の死亡者数、死亡率の推移を下図に示す。