コラム

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コロナ禍での在宅勤務において親子のこころの健康を保つには

海外・福島へのインタビューを踏まえて課題解決策を探る

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2020.8.31

コロナ禍における親子のこころの健康に関する検討チーム

MRIトレンドレビュー
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした小中高校の休校や学童保育の休止、幼稚園・保育園等の保育施設の休園や外出自粛要請を受け、長期間にわたり自宅で終日を過ごす親子が特に大都市圏にて急増した。新型コロナへの不安を抱えながら、自宅で子どもと過ごすことに悩みやストレスを感じる親も多かった。

この中には、子どもの面倒をみながら在宅勤務を行う世帯も少なからず存在した。子どもを守りながら新型コロナの感染拡大防止に努めることと、在宅勤務でもオフィス勤務と同様の効率で仕事することを両立させようとして課題に直面した方も多かったに違いない。子育てと在宅勤務の両立により生じた主なストレスの要因として考えられるものを、当社社員の体験も踏まえて図1のように整理した。今後の感染拡大状況によっては、再び育児を伴う在宅勤務の必要性が生じ、そうした状況が長期化する可能性もある。それに備えて、ストレス要因・反応として表れている各種課題の解決を進めることは、親自身のうつ病や子どもへの虐待発生の未然防止につながる。
図1 育児を伴う在宅勤務により親に生じたストレス要因・反応(生じた課題)
図1 育児を伴う在宅勤務により親に生じたストレス要因・反応(生じた課題)
出所:三菱総合研究所
そこで、新型コロナの感染拡大防止のために日本より厳しい行動制限が課された国に在住している日本人の方々に対して、これらの課題解決に向けた示唆を得るべくインタビューを行った。また、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後の福島県においても、放射線による被ばくを避けるため、子どもを外で遊ばせることが困難となった時期があり、当時福島県で子育てをされた方の経験はコロナ禍と共通する面がある。そこで得られた教訓を参考にすべく、福島県在住の方にもインタビューを行った。今回協力いただいたのは、以下の4カ国および福島県在住の合計6人の方である。 

  • シンガポール(ジャーナリスト:中野円佳さん。コロナ禍以前から在宅勤務、夫はコロナ禍により在宅勤務)
  • フランス(コロナ禍により在宅勤務となったご夫妻)
  • アイルランド(コロナ禍でも出社を継続された女性。夫はコロナ禍により在宅勤務)
  • イタリア(専業主婦。夫はコロナ禍により在宅勤務)
  • 福島県いわき市(弁護士:菅波香織さん。コロナ禍でも出勤継続)

今回お話を伺った4カ国在住の方々の状況はおおむね以下のようにまとめることができる。

  • 日本よりも厳しい外出制限が課されていたが、子どもは環境変化に比較的早く対応できていた。
  • その一方で、仕事と育児の両立が、外出制限開始当初は親にとって大きなストレスとなっていた。その後は、学校によるオンライン授業への慣れなど子どもの生活リズムが徐々に安定化し、職場の理解・協力のもと、親は子どもの生活リズムにあわせて業務時間帯や業務量を調整して在宅勤務を行うようになっていった。
  • 加えて、家庭内での家事・育児の役割分担を再構築したり、ストレスをため込まないよう親子がそれぞれ工夫したりするなどの試行錯誤を重ねることで、行動制限下の生活パターンが徐々に確立されていった。

また、原発事故を経験した福島では、当時の経験がコロナ禍でのストレスや不安の軽減に活かされていた。インタビュー内容の詳細は下記PDF「詳細版」文末に記載の通り。

今回のインタビュー対象者は全員が在宅勤務者ではなかったものの、配偶者の在宅勤務の様子や自分自身のストレスとの向き合い方などから、育児を伴う在宅勤務における課題解決に向けて非常に参考になる点が多かった。これを踏まえ、図1に示した課題解決の方向性について、「企業・組織」、「行政、保育・教育現場」、「家庭・個人」といった課題解決のための取り組みを担う3つの主体別に図2のように検討した。緊急事態宣言というかつてない措置のもと、在宅勤務と並行して育児を行わなければならなかったことで生じた課題は、下記の各主体が単独で解決策を講じても効果は限定的で持続可能なものにはならない。特に、家庭・個人の取り組みと、企業・組織や行政、保育・教育現場といった家庭外の取り組みは、それぞれを車の両輪として捉え、各主体の努力と協働による課題解決が必須である。課題が克服できれば、コロナ禍を各主体の飛躍に向けた成長の機会と前向きに捉えることも将来的には可能になるに違いない。

コロナ禍を経て、親の働き方や子どもとの関わり方といった家庭の在り方にも変化の兆しがみられている。国内外の経験・知見を踏まえながら、日本で今後生じると予想される課題の解決に向けた検討を重ねていくことが不可欠である。
図2 各主体における課題解決に向けた取り組み
図2 各主体における課題解決に向けた取り組み
出所:三菱総合研究所
コロナ禍における親子のこころの健康に関する検討チーム
村上佳菜、義澤宣明柿沼美智留高橋尚子、奥野翔子、亀田由紀子、玉川絵里、橋本佳奈、滝澤真理