水産白書では、「水産物の流通過程において、魚体のサイズがふぞろいであったり、漁獲量が少なくロットがまとまらないなどの理由から、非食用に回されたり、低い価格でしか評価されない魚」とされる※1。本コラムでは、利用度の低い「低利用魚」も含めて考察する。
国連食糧農業機関(FAO)のレポート※2によると、世界の漁獲廃棄率は10.8%、年間漁獲廃棄量は910万トン(2010~2014年のデータより推計)である。漁具によってばらつきは大きいが、年間漁獲廃棄量の45.5%(420万トン)が底びき網によるものであった。底びき網漁の平均漁獲廃棄率は21.8%と高くなっている。
日本の海面漁業の漁獲量(2020年)は321万トンである※3。全世界の年間漁獲廃棄量は、日本の漁獲量の約2.8倍に相当しており、そのインパクトの大きさが伺える。
日本の属するNORTHWEST PACIFICの海域の漁獲廃棄率は9.1%とされており※2、あくまでも推計ではあるが、日本では30万トン前後の年間漁獲廃棄が発生している可能性がある。世界と同様に年間漁獲廃棄量の45.5%が底びき網に由来すると仮定すると、13.7万トンが底びき網で廃棄されていると推定される。
世界平均の1人当たり年間食用魚介類供給量は19.9kg(2019年)であり※4、約4.6億人分の消費に見合う量が廃棄されていることになる。一方、日本の1人当たり年間食用魚介類供給量は44.6kg(2019年)であり※4、30万トンが廃棄されているならば、約673万人分の消費に該当する。これらの情報を整理すると、図1の通りとなる。
*1:内水面漁業の漁獲量を除くとされており、海面漁業と判断。漁獲廃棄率より割り戻して算定。なお、2018年の世界の海面漁業の漁獲量は8,440万トンとされ※5、2010~2014年のデータから推計した場合に大きな差分はない。
*2:2010~2014年のデータからの推計値※2。
*3:底びき網の漁獲廃棄率より割り戻して算定。
*4:2020年の値(2023年1月時点で最新の令和3年度水産白書は2020年の値を使用)※6。
*5:日本の属するNORTHWEST PACIFICの海域の漁獲廃棄率9.1%※2をもって推計。
*6:世界の漁獲廃棄量のうち45.5%が底びき網に由来することから※2日本でも当該比率と仮定して推計。
*7:2019年の値(2023年1月時点で最新の令和3年度水産白書は2019年の値を使用)※4。