外交安全保障問題の現状と先行きを解説するシリーズ13回目は、国連の拒否権という切り口で集団安全保障と国連改革の必要性について考察する。
※1:阿部齊・内田満・高柳先男編(1988年)『現代政治学小辞典』有斐閣。
※2:国連では憲章に基づき安全保障理事会(以下「安保理」)が前文に定められた集団安全保障体制の中心として、「国際の平和と安全」に対し集権的かつ一義的な責任を負う。具体的には、他国の領土侵犯や武力行使などがあった場合は安保理が「平和に対する破壊または侵略行為の存在」と認定し、必要な措置を決定し他国はそれに従う義務がある。また冷戦以降は安保理が対処すべき国際社会における問題が国家間紛争だけでなく内戦やテロなどに拡大し、国際社会が人権保障や環境問題など人類共通の利益に関心を示し専門機関も含めて対処を行うようになった。
※3:竹内俊隆・神余隆博編著(2021年)『国連安保理改革を考える』東信堂、2021年。
※4:国連憲章第24条1項。
※5:国連憲章第39条。
※6:暫定的措置(国連憲章第40条)、非軍事的強制措置(同第41条)、軍事的強制措置(同第42条)。
※7:国連憲章第25条。
※8:Security Council Report, Research Report October 2015 “The Veto”より
※9:2023年7月13日時点、UNHCRデータポータルより。行方不明者は数万人いると言われており、国連シリア調査委員会が行方不明者・失踪者の追跡を行う独立機関の設立を決定した。
※10:OHCHRレポート“Behind the data: Recording civilian casualties in Syria”
※11:2023年7月11日に、シリアの反体制派地域にトルコを経由して食料などの支援物資を届ける活動(安保理決議S/RES/2504)の延長決議案がロシアの拒否権発動により非採択となり、当活動は10日に失効。
※12:拒否権の行使により安保理が適切な行動を取ることができない場合に総会が安保理に代わって集団的措置について加盟国に適切な勧告を行う制度。
※13:3回以上の会合が開かれた特別緊急総会は第10回のみ。
※14:国連憲章第27条3項。
※15:S/2014/189、S/2022/155
※16:2023年7月11日にロシアがシリアの人道支援延長決議案に拒否権を発動したことについても、2023年7月19日に総会が開かれる。