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2018年8月号トピックス6経済・社会・技術

ポスト2020のレガシー創出は若者が主役

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2018.8.1

プラチナ社会センター片岡 敏彦

経済・社会・技術

POINT

  • ロンドン五輪では若者の社会参加促進が目標とされたが不十分だった。
  • 東京の若者は大会自体への関心は低いが、社会変革への期待が高い。
  • 彼らに社会活動参加の方策を示し、大会後も続く効果の創出を。
オリンピック・パラリンピックは、インフラ整備に伴うハード面の恩恵だけでなく、スポーツへの関心が高まり環境意識が醸成されるなど、ソフト面でも持続的な効果(レガシー)を、開催都市にもたらす。2012年のロンドン大会では、移民や失業の問題を背景に若者の社会参加促進が目標に掲げられた。しかし、大会関係者によると、若者が企画や意思決定における重要な責務を、十分担うには至らなかった。

2020年の東京大会に向けた提言や事業の具体化を進める組織、レガシー共創協議会(会長:間野義之・早稲田大学教授)の調査結果によると、20代の若者の東京大会への関心自体はほかの世代よりも低い。しかし、「大会をきっかけとして社会が良くなる」というレガシー創出への期待は高い。さらに、大会に向けて各種のイベントを企画するなど、積極的な姿勢が目立つ(図)。

こうした傾向は東京を中心に強い。若者にとって大会は数あるイベントの一つにすぎないが、これを機に創出されるレガシーは、彼らの生活に密接に関わるからだと推察される。しかし、社会活動への参加意欲は旺盛なものの、具体的な関わり方を知らない若者は多い。そこで、同協議会は、若者によるレガシー創出を支援する「渋谷民・未来創造プロジェクト」を、渋谷区などとともに展開中である。

2018年度は、公募に応じた18~29歳の若者が、渋谷区や企業が提示した課題をどう解決するかを検討した。「2020パラリンピックの会場を満席にするには」「2020年以降に障がい者のスポーツ参加を増やすためには」などのテーマで、ワークショップを3回行うなどして解決策を議論し、7月17日に最終発表会が行われた。貧困撲滅や環境保護などを目的に国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)を、買い物時のインセンティブ付与を通じて、知らず知らずのうちに達成に向かわせる方策などがアイデアとして示された。

こうした若者を巻き込んだ取り組みは、大会が行われる2020年で終了するのではなく、2020年以降に発生する社会課題に対応して、継続させる必要がある。現時点から、ポスト2020をにらんで、手を打っておくべきなのである。
[図]2020年東京大会への関心、レガシー創出への期待、関連活動実施状況