マンスリーレビュー

2022年8月号特集3エネルギーサステナビリティ

再エネ価値の顕在化に向けて

2022.8.1

サステナビリティ本部車 椋太

エネルギー

POINT

  • 電力調達の再エネ化は、企業に求められる重要な行動変容の1つ。
  • 再エネ電力の選択において「付加価値」の重要性が拡大。
  • 価値の可視化と情報提供による行動変容の後押しが重要。

企業に求められる再エネ化の行動変容

カーボンニュートラル社会の実現に向けては、再生可能エネルギー(再エネ)の早期の導入拡大が不可欠である。こうした中、企業には、消費電力を再エネ由来に切り替えていく行動変容が強く求められている。

再エネ電力は、発電時に温室効果ガスを排出しないという環境価値を持つ。電力の環境価値は、日本卸電力取引所が運営する非化石価値取引市場において、電力そのものから分離された証書の形態で取引されている。企業は小売事業者から再エネ由来の非化石証書を組み合わせた電力の供給を受けることで、電力調達を再エネ化できる。

再エネ電力の「付加価値」がより重要に

近年では、再エネ電力の環境価値に加えて、地域貢献や「追加性」※1のような、より多様な価値が注目を集めている。本稿では、電力としての価値、環境価値とは別に、再エネ電力が持つその他の価値を「付加価値」と呼ぶ。

非化石価値取引市場において2019年に開始されたトラッキング※2実証事業では、環境価値の由来となる電源種や発電所所在地のような属性情報を付与した非化石証書が販売されている。小売事業者はこのようなトラッキング付証書を活用して、RE100※3の規定に対応した電力や、地産地消をコンセプトにした電力を企業に供給している。

当社は小売事業者のUPDATERとともに、再エネ電力調達に対する企業や個人の意識・志向性を明確化するための実証研究を行っている※4。この中では、再エネ電力の付加価値に対するニーズの規模や、追加的なコスト負担をどこまで許容できるかに関する調査や分析を進めている。実証研究は2022年末まで行い、付加価値の明確化を通じた再エネ導入に貢献することを目指す。

再エネ導入の加速が求められる中、地域と調和・共生した適正な電源開発や、追加性のある電力調達への社会的要請は高まっていくだろう。今後は企業が電力を選択する際の判断基準として、再エネ電力の付加価値がこれまで以上に重視されていくと想定される。

再エネ電力取引のプラットフォームが必要

現行の制度下では、再エネ電力の付加価値を多角的に評価して、電力選択の際の判断に活用する仕組みが十分に整備されているとはいえない。

付加価値を訴求しつつ、企業による再エネ電力調達を拡大していくためには、付加価値を明確に可視化した上で、それらの情報に企業が容易にアクセスできる環境を創出することが有効であると考えられる。

今後数年でさらなる高まりが見込まれる再エネ電力調達ニーズへの対応と、企業による再エネ電力調達の行動変容促進を両立させる施策の一例として、発電事業者、小売事業者と、企業による電力取引のマッチングを支援するプラットフォーム型のサービスを提案したい(図)。
[図] 再エネ電力取引を支援するプラットフォーム
[図] 再エネ電力取引を支援するプラットフォーム
出所:三菱総合研究所
プラットフォーム上では、発電事業者が所有する発電所や、小売事業者が提供する電力小売メニュー、その他事業者による取り組みに関する情報を集約して掲載する。

これにより、各事業者は供給する再エネ電力の付加価値を可視化し、その価値を訴求することができる。一方で、企業は再エネ電力の付加価値に対する自身のニーズに照らし、多様な選択肢を比較しながら調達先を選択できるようになる。

また、プラットフォーム上では、例えば地域への貢献を重視する再エネ電力が多くの企業に選択されているなどの情報を蓄積することができる。こうした情報が共有されることで、発電・小売事業者が地域貢献の取り組みを拡大させるなど、さらなる付加価値の創出も期待される。

再エネ電力取引のマッチング支援が進めば、これまで主流であった小売事業者から企業への電力供給に加え、発電事業者と企業が電力売買の長期契約を直接結ぶコーポレートPPA(電力購入契約)のような取引が活性化することも考えられる。取引の多様化は、発電・小売事業者と企業の双方がとりうる選択肢を拡大させる。

結果として、企業による電力調達ニーズが充足されるとともに、供給側の取り組みを通じた再エネ導入拡大も後押しされる。

再エネ価値の顕在化のためには、電力の多角的な価値が正しく認識されるとともに、行動変容が多様な主体に浸透することが重要である。さらなる導入拡大に向けて、再エネ電力の全体的な価値を向上させつつ、企業の行動変容を後押しする実効性の高い取り組みが、今まさに求められている。

※1:再エネ発電設備の新設(追加)を後押しして、社会全体の再エネ導入量拡大に貢献する性質を指す。

※2:電力や環境価値の供給元を追跡して、特定できるようにする仕組み。

※3:Renewable Energy 100%の略。企業が事業活動における全消費電力を再エネ由来とすることを目指す国際組織。

※4:当社ニュースリリース(2022年7月4日)「三菱総合研究所、UPDATERと再エネ電力調達に関する実証研究を開始」。

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