AIプロダクトの普及により、これまでは専門家に任せていた作業が、一般の人でも簡単にできるようになる。AIプロダクトが足りない技術や知識を補い、時間がかかる作業を代わりにやってくれるからだ。そうすると、利用者はすべてを自分でやってしまうか、あるいは従来とは異なるサービスを専門家に依頼するようになる。
このように、提供者側に求めるサービスの内容や品質が変わると、そうしたサービスの提供が得意な新しいサービス提供者が市場に登場し、旧来のサービス提供者は撤退を余儀なくされる可能性がある。こうした、AIプロダクトが引き起こした変化によってサービス提供者が入れ替わる状況を、「ゲームチェンジ」と呼ぼう。
技術革新による「ゲームチェンジ」は、過去にも頻繁に起こっている。古くは、人の手で作っていた織物も、今ではほとんどが機械で作られるようになった。今回のゲームチェンジの原動力となるのがAIプロダクトである。
「ゲームチェンジ」を起こしうる主要なAIプロダクト(「破壊的AIプロダクト」)には、「自動運転車」「ロボットハンド」「AIエージェント」「仮想・拡張現実」「機械翻訳」などがある。例えば、自動運転車が普及すると、自動車を個人が所有せずにサービスとして利用する「MaaS(Mobility as a Service)」が社会に浸透し、公共交通機関や観光地のさまざまな既存事業をめぐってゲームチェンジが起きる。
図3 破壊的AIプロダクトが引き起こすゲームチェンジ
出所:三菱総合研究所