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今、なぜプラスチック問題が注目されているのか

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2018.12.21

環境・エネルギー事業本部山村桃子

環境・エネルギートピックス
世界各国で、レジ袋や使い捨てプラスチックに対する規制強化の動きが加速しており、欧州や北米、アジア、中東、アフリカなどに広がりがりをみせている。日本でも、大手飲食チェーン店や食品メーカー、アパレルメーカーなどによる、使い捨てプラスチックの利用・提供廃止やプラスチック製レジ袋から紙袋への移行といった自主的な取り組みが連日報道されている。
これまで、軽量で丈夫であることや成形性の良さ、着色が容易であること、密封性、耐熱性などの優れた特徴から、さまざまな用途でプラスチックの利用が拡大してきた。
しかし、大量生産、大量消費、大量廃棄の社会システムから資源循環型社会への転換に関する議論の進展に加え、中国による廃プラスチックの輸入禁止に端を発して、アジア各国で規制の動きが広がっている。そのため主に中国向けに輸出されていた約150万トンの廃プラスチックが行き場をなくし、国内でのリサイクル体制の整備などの早急な対応が求められることとなった。
規制強化の最大のトリガーとなったのは、海洋プラスチック問題である。当初は海ごみの漂流や海岸への漂着にフォーカスされていたが、微細なプラスチックごみであるマイクロプラスチックによる汚染が深刻化している。こうした汚染は魚や食用塩などにまで広がり、人体にも悪影響を及ぼす可能性も指摘されたことから、世界的に大きな懸念事項となり、各国でプラスチック対策が一気に加速することとなった。

このような状況に対し、2018年6月のG7サミットでは海洋プラスチックごみ問題が議題として取り上げられ、「海洋プラスチック憲章」が採択された。日本は産業界との調整がついていないことなどを理由に署名を見送ったことから、国内外で批判が相次いだ。
一方、日本ではプラスチックに関する各種問題に対応するための検討が続けられており、第四次循環型社会形成推進基本計画では、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略を策定した。さらに、環境省は11月に「プラスチック資源循環戦略(案)」を取りまとめた。パブリックコメントなどを踏まえた上で、2019年に日本で開催されるG20サミットで世界に向けて発信する予定である。
戦略(案)では、「2030年までにワンウェイプラスチック(使い捨てプラスチック)を累積で25%排出抑制」することや「2035年までに使用済プラスチックを100%有効利用」するといった具体的な数値目標を盛り込んだマイルストーンが提示されている(図1参照。なお戦略(案)の中では、数値目標に対する基準年は明確にされていない)。
図1 プラスチック資源循環戦略(案)におけるマイルストーン
図1 プラスチック資源循環戦略(案)におけるマイルストーン
出所:「プラスチック資源循環戦略(案)の概要」(環境省)をもとに三菱総合研究所作成
国民目線で最も大きなインパクトを与えそうなのは、ワンウェイプラスチックの使用削減対策の一つである「レジ袋有料化の義務化」だ。経団連や日本チェーンストア協会からは、業種や企業規模などで差をつけず、全国一律の早期法制化を求める意見書・要望書が出されている。事業者とレジ袋削減に関する協定を締結し、独自にレジ袋対策を進めてきた自治体からも歓迎の意見が出ている。一方、消費者の反応は賛否両論で、さまざまな意見が上がっているようだ。

では、プラスチックごみが引き起こすさまざまな問題は、今後企業活動にどのような影響を与えるのか。プラスチックを取り巻く状況は刻々と変化し、厳しさを増している(図2参照)。例えば海洋プラスチック問題は、海岸漂着物の回収義務化やプラスチック素材の利用制限といった規制強化に結び付くと考えられ、規制への対応が遅れれば事業継続困難やコスト増につながりかねない。このため、企業は、自社の事業領域におけるリスクを適切にモニタリング・管理して国内外の規制動向を見極め、早急かつ適切に対応する必要がある。
一方で、これらの脅威をビジネスチャンスと捉え直すことで、企業イメージ向上だけでなく、市場ニーズ・将来性を踏まえた新素材(バイオマスプラスチックや代替素材)の導入や機動的な製品開発、循環型システムの導入による先行者利益の獲得につながる。今、企業にはプラスチック問題を契機として、守りだけでなく攻めの姿勢が求められている。
当社としては、シンクタンクとしてこれまで蓄積してきた豊富な知見と関連ネットワークを駆使し、最新動向のモニタリングや科学的かつ客観的な根拠に基づく解決策の提案、イノベーション創出支援などにより、社会に貢献していきたいと考える。
図2 プラスチックを取り巻く状況と企業活動への影響
図2 プラスチックを取り巻く状況と企業活動への影響
出所:各種資料をもとに三菱総合研究所作成