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新型コロナウィルス(COVID-19)危機対策:分析と提言ヘルスケア・ウェルネス

新型コロナウイルス各国施策分析レポート2:感染者数急増後の対応から学ぶこと(独仏比較)

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2020.4.16

ヘルスケア・ウェルネス事業本部谷口丈晃

平川幸子

仲尾朋美

新型コロナウィルス(COVID-19)危機対策:分析と提言
新型コロナウイルスへの対策は、WHO Pandemic Influenza Preparedness and Response(以下「WHOガイドライン」)に則って、各国であらかじめ策定した対応計画に基づき展開されている。日本でいえば、「新型インフルエンザ等対策行動計画」および「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づいて対策が打たれているのと同じである。このように、各国の対策はWHOガイドラインに則っているため、大きな差があるわけではない。

ところが、感染者数が急増した後の死亡者数の推移をみると、隣国同士であるドイツとフランスには差が見られることから、両国の違いについて分析を行った。

なお、本分析は両国政府が発表した資料をベースにしたものであり、現地調査などを実施したものではないことをあらかじめお断りしておく。
図 ドイツとフランスの新型コロナウイルス対応の比較
図 ドイツとフランスの新型コロナウイルス対応の比較
両国における新型コロナウイルス感染者数の急増日を見ると、フランスが3月10日、ドイツが3月11日と、ほぼ同じである。感染拡大防止に向けた各種対策もほぼ同時のタイミングで実施されており、大差はない。

一方、医療提供体制については、両国の施策に違いが見られる。既存病床数を比較すると、人口1,000人あたりの病床数は、ドイツが6.0、フランスが3.2と、もともとほぼ倍の差がある(前回レポート1参照)。フランスは、感染者数急増前に病床数の確保に着手し、急増直後に緊急性の低い診療を抑制するなど病床の拡充・確保を図っている。しかし、十分な病床の確保等が間に合わず、特に感染者数急増後に野戦病院等の設置など想定外の対応を余儀なくされた可能性が高い。これに対してドイツは、既存病床数の多さという強みを活かしつつ、想定外の事態を引き起こさないための準備が十分になされ、これを迅速かつ具体的に実現したことが伺える。具体的には、既存病床の活用方法の工夫、さらに既存病床の負担軽減を目的としたホテルの活用などにより、感染者の急増後も十分な医療提供体制を維持できたと考えられる。
表 ドイツとフランスの経済対策(3月末までに実施)の比較
表 ドイツとフランスの経済対策(3月末までに実施)の比較
出所:三菱総合研究所
経済対策についても、両国で違いが見受けられる。ドイツでは、3月中に幅広い企業・個人に向けた経済的支援を公表し、フランスに比べ早期に具体化している。連邦統一ガイドラインに基づく強化策について、連邦政府と各州の合意形成が迅速に行われ、経済的な不安を払拭することで、接触制限措置に関する国全体の対策が強化された可能性が高い。

また、連邦制の特徴を活かし、感染が急増している地域の州政府(バイエルン州など)が独自の対応を打ち出すなど、地域の状況に応じて、迅速かつ大胆に対応を決定して実施していることも死亡者数の抑制につながっているものと思われる。

現状の日本においては、オーバーシュート一歩手前の状況といわれており、感染者数の急増に備えた病床数や軽症者の宿泊先の確保が第一であると考えられる。例えば感染者数が急増している東京都の1,000人あたりの病床数(高度急性期及び急性期)は4.9で(前回レポート1参照)、フランスの3.2よりは多いもののドイツの6.0より少なく、十分な病床数が確保されているとは言えない可能性がある。また、ドイツ・フランス両国ともに、退職した医師や医学生、軍などを動員し、国が主体となって医療スタッフを拡充している。日本においても、感染者数が急増した場合に備えて、医療従事者を十分に確保するための具体策が必要であると思われる。

「想定外」は死亡者数の増加に直結する。感染者数の急増に耐えうる十分な病床および医療従事者を先回りして確保すること、医療資源の地域差を考慮して感染の拡大状況に応じて再配分ができるような準備が、今まさに求められている。加えて、接触制限措置をより有効に機能させるために、地域の実情に応じて強力な経済対策を取ることが求められている。
ドイツとフランスの新型コロナウイルスへの対応状況(政府発表資料等より)
なお、本文中に掲載した各種データの算出方法と出典は、「新型コロナウイルス各国施策分析レポート1:各国の感染者数と死者数から見た医療提供体制の状況」をご参照いただきたい。

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