「アートがビジネスの役に立つ」と聞いたら、どんなことを想像しますか? 製品や広告などデザインといったアウトプットとしての活用が思いつきやすいのではないでしょうか。もちろんそういった側面もありますが、「思考・発想・リーダーシップに革新をもたらす」と聞いたら、信じてもらえるでしょうか。
変化の激しい時代において、論理的思考力だけではなく観察力・直観力・共感力といった感性的思考力の重要性が近年指摘されています。学校教育に関しては、文部科学省がSTEAM教育※1の導入を推奨し、問題発見力や主体性を引き出すことを説いています。また、ビジネスの領域では山口周氏※2や末永幸歩氏のアート思考を主題とする著書がビジネス書のジャンルでヒットし、海外に目を向ければビジネススクールでアート×ビジネスの思考法が展開されるなど、ビジネスパーソンの間でも感性的思考が注目されていることがうかがえます。
変化の激しい時代において、論理的思考力だけではなく観察力・直観力・共感力といった感性的思考力の重要性が近年指摘されています。学校教育に関しては、文部科学省がSTEAM教育※1の導入を推奨し、問題発見力や主体性を引き出すことを説いています。また、ビジネスの領域では山口周氏※2や末永幸歩氏のアート思考を主題とする著書がビジネス書のジャンルでヒットし、海外に目を向ければビジネススクールでアート×ビジネスの思考法が展開されるなど、ビジネスパーソンの間でも感性的思考が注目されていることがうかがえます。
図1 帯からも人気の様子がうかがえる
こうした注目の背景には、「これまでのような『分析』『論理』『理性』に軸足をおいた経営、いわば『サイエンス重視の意思決定』では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない」※3 実状や、分析・論理・理性といった思考回路はやがてAIに取って代わられる領域であることへの危機感があります。予測不能な社会で意思決定をする上で、人間ならではの観察・直観(ひらめき)・共感を論理的思考と組み合わせることで生まれる可能性に期待が集まっているのです。
その一方で、多くのビジネスパーソンは感性的思考を鍛える機会を得られずに今日まで過ごしてきました。この傾向は、年代が上がれば上がるほど顕著です。なぜならば、美術や図工、音楽といった教科では、描き方・奏で方といった「技法」や、有名な作品やアーティストといった「知識」を教わることが中心であり、1つの作品をどのように味わうか、すなわち感性的思考をどう鍛えるかといった教育は、教科書上でも教員の指導内容でも長い間取り上げられてこなかったからです。教育体系上、感性的思考を鍛える機会がなく、その有用性を体感してこなかったことが、感性的思考をビジネスに役立てるという発想が浸透しない障壁となっています。なお、2008年になると学習指導要領で「鑑賞」分野に注力する旨がうたわれ、鑑賞教育は教員養成課程や教科書で取り扱われるようになりました。したがってビジネスの場面で感性的思考が浸透するのは、時間の問題といえそうです。
その一方で、多くのビジネスパーソンは感性的思考を鍛える機会を得られずに今日まで過ごしてきました。この傾向は、年代が上がれば上がるほど顕著です。なぜならば、美術や図工、音楽といった教科では、描き方・奏で方といった「技法」や、有名な作品やアーティストといった「知識」を教わることが中心であり、1つの作品をどのように味わうか、すなわち感性的思考をどう鍛えるかといった教育は、教科書上でも教員の指導内容でも長い間取り上げられてこなかったからです。教育体系上、感性的思考を鍛える機会がなく、その有用性を体感してこなかったことが、感性的思考をビジネスに役立てるという発想が浸透しない障壁となっています。なお、2008年になると学習指導要領で「鑑賞」分野に注力する旨がうたわれ、鑑賞教育は教員養成課程や教科書で取り扱われるようになりました。したがってビジネスの場面で感性的思考が浸透するのは、時間の問題といえそうです。