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MRIトレンドレビュー経営コンサルティング

ビッグデータの今:需要予測におけるビッグデータ活用

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2016.8.9

先進データ経営事業本部高橋淳一

MRIトレンドレビュー

■需要予測の進め方が変わりつつある

新しい商品・サービスの投入検討時、必ず行うのが「需要予測」である。「需要予測」を行うには、顧客ニーズを的確に捉えなければならないが、既に市場に投入済みの商品・サービスであればいざ知らず、これから設計・開発していこうという新しい商品やサービスについての顧客ニーズは簡単に捉えられるものではない。
まずは、マーケティング用語でいうところのシーズやウォンツを捉え、そこから潜在的なニーズを探っていくという方法が想定される。だが、実際の調査で用いられるアンケートやインタビューといった方法では、十分なデータが収集できない場合が多い。
しかしながら、ビッグデータの活用やICT、IoT技術の発展により、需要予測の進め方は急激に変わり始めている。以下では、具体的な事例を交えながら、需要予測の現在および将来について考える。

■顧客行動・嗜好をダイレクトにデータから捉える

需要予測を行う際に用いられることが多かったアンケートやインタビューといった従来の調査手法では、顧客の行動や嗜好を間接的にしか把握できなかった。しかし、昨今、直接的なデータを収集・把握することができるようになってきた。
代表的な事例として挙げられるのが、位置情報の収集・活用であろう。NTTドコモが提供する「モバイル空間統計」や、KDDIとコロプラが共同で提供する「Location Trends※1」では、携帯電話のWi-FiやGPSを通じて取得される位置情報を収集し、マーケティングへ活用している。
Web上の一連の顧客行動についても、閲覧記録を通じて把握しようという試みがなされている。Values※2は、自社のモニター会員を対象にWebの閲覧ログデータを収集。いつ、どのサイトを閲覧し、最終的にどのような過程を経て購入や申し込みに至ったのかを分析可能である。
SNSログの活用に向けた動きもある。SNS大手の米Twitterは、条件を指定して投稿データを抽出できるAPI※3を提供するデータビジネスを展開中。こういった投稿データに対してテキストマイニングなどの技術を活用することで、ユーザーのニーズ・嗜好の変遷をたどることが可能となる。(図1)
図1:twitterの投稿データの分析イメージ(MRI作成)
図1:twitterの投稿データの分析イメージ(MRI作成)
出所:三菱総合研究所

■データ収集は「人間の感情」にまで及びはじめた

以上紹介したのは、顧客行動に関するデータ収集の事例だったが、さらに進んで、顧客自身が意識していない潜在的なデータを収集しようという動きも出ている。
米国のデザインコンサルティング会社mPath※4では、皮膚の導電率を測定することで、ストレスや興奮などの感情の変化を読み取るセンサー を用いた新製品のユーザーテストを行っている。
例えば、店を訪れた女性にどのように感じたかをインタビューしたとする。その女性は売り場のすべての製品に興味を持ったと答えるかもしれない。だが感情センサーにより皮膚導電率を調べることで、彼女がどのサインやパッケージを見たときに特に興味を示していたかがわかるようになる。

■「群衆の知」の活用~予測市場という可能性

以上のように活用可能なデータが多様化する一方で、予測手法に関してもユニークなアイデアが出始めている。
「特別な専門知識を持たない群衆の集合知は、少数の専門家の知恵を上回る」という「群衆の知」の考え方に基づき、世の中のさまざまな将来事象を、市場を通じて予測しようとする「予測市場」が模索されている。
「予測市場」では、予測対象の実現値に応じて事後的に配当が与えられる仮想の「予測証券」を発行。市場で自由に売買できるようにする。外部環境変化などにより刻々と変化する予測証券の市場価格を、市場参加者の集合値として予測に活用するというものである。
代表的なのは、米アイオワ大学が運営するIowa Electronic Markets(IEM)だ。オバマ大統領の当選確率予測(図2)は有名だが、その他にも「連邦準備銀行の金融政策」「経済・景気指標」など、マクロ的な社会・経済事象の予測にはじまり、最近では、企業製品の需要予測への活用も増加している。
米国では同市場が賭博に当たらないのかといった議論もなされており、法的な整備はこれからではあるものの、需要予測の新たな手法として注目しておくべき事例であるといえる。
図2:オバマ大統領当選の予測精度(Foxなどメディア各社よりもIEMの予測が投票結果に近かったことを示している。)
図2:オバマ大統領当選の予測精度(Foxなどメディア各社よりもIEMの予測が投票結果に近かったことを示している。)
出所:IEMホームページ※5より

■今後は、需要予測のあり方自体が変わっていく

このように需要予測に活用されるデータや手法が進化する中で、需要予測のあり方自体にも変化が生じはじめている。従来、需要予測の結果は、事業計画や新商品・サービス導入時の意思決定の際の間接的な活用にとどまっていた。しかし、最近では、事業運営の過程で収集されたデータをもとに需要予測をリアルタイムに実施し、その予測結果を、新たな需要喚起や事業リソースの最適化などにダイレクトに活用していこうという動きが著しい。
NTTドコモは、携帯電話ネットワークの仕組みを利用して作成される人口統計(いまどこにどんな人がいるかという情報)に、タクシー運行データや気象データ、周辺施設に関するデータなどをかけ合わせて分析することで、現在から30分後の乗車数をリアルタイムに予測する「移動需要予測技術」の開発をすすめている。同社では、本技術の実用化により、タクシーの売り上げ増だけでなく、運行効率化やドライバー配置の適正化へも寄与するものと期待している。
本事例のように、今後の需要予測は単一目的の独立した活動としてではなく、事業の改善・拡大・改革に直結する一連の業務フローの一部として組み込まれていく方向へ向かっていくだろう。
その際、強力なツールとなるのがビッグデータである。ただし、ビッグデータは取り扱い方次第では誤った解釈・判断をしてしまう危険性があることには留意しておきたい。日々拡大・膨張していくビッグデータを相手に、いかに有用な情報を捉え、アクションへつなげていけるかは、今後、データサイエンティストの力量が問われる分野となっていくことであろう。

※1http://www.location-trends.com/

※2http://www.valuesccg.com/

※3アプリケーション・プログラム・インターフェイスの略。プログラミングの際に使用する機能やデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のことで、TwitterのAPIを自分のプログラムに取り入れることで、第三者は簡単にTwitter投稿データを収集することができる。

※4http://www.buildempathy.com/

※5http://tippie.uiowa.edu/iem/

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