今回は、IMD「世界競争力年鑑2020」から競争力を構成する個別項目を詳細に見ることで、日本の競争力構成要素の主たる強みと弱みを示す。なお、強みと弱みの項目構成の多くが、この5年間で大きく変化していないことから、それらが構造的なものであることが推察される。日本の構造的な強みと弱みを把握することで、競争力向上のためのヒントを探りたい。
※1:Griliches, Z and Mairesse, J. “Productivity and R&D at the Firm Level, in R&D, Patents, and Productivity,” University of Chicago Press, 1984. など。
※2:例えば競争力を構成するA項目で順位が高い(低い)国は、他のB項目でも順位が高い(低い)場合、A項目とB項目の類似性が高いとみる。そしてA項目とB項目の類似性の高さは、両項目の補完性の高さ(一方の改善が他方の改善をもたらす)にも通じる。なお図1をみると、同じ大分類や小分類に属することが必ずしも各項目の順位の類似性を意味していないことが分かる。
※3:同一クラスター内にある項目は相互に補完的であるとみなせるため、通常、同一クラスター内の項目の順位は同程度になる傾向がある。日本では、この「市場環境変化の認識と迅速な対応」クラスターにおいては高順位と低順位が混在しており、強みを活かせる補完的な条件が整備されていないとみることができる。
※4:競争力を規定する要素は時代とともに変化する。それに応じ、IMD「世界競争力年鑑」の構成要素も適宜入れ替えがなされている。世界的なコロナ禍により、今後はデジタル化関連項目や持続可能性に関する分野のウエートがより高くなることも想定される。