特に、スマホは注目される。2008年の iPhone3G発売を契機として、2010年代に入って日本でも本格的にスマホの普及が始まった。2011年3月の東日本大震災時にも、スマホからのSNS利用で、被災者やボランティアの間での情報交換・共有が活発に行われた。スマホからインターネットを通してクラウドコンピューティングを使い、蓄積された知識やノウハウにアクセスし活用するという「PC不要のユーザーインターフェース(UI)の時代」が本格的に到来した。新たなUI時代の到来で、一般市民は感覚的な操作だけで高度なコンピュータを利用できるようになった。この点が、ICT利活用を叫んでも進まなかった2005年頃と大きく異なっている。
農林水産業、健康医療、防災・救急、観光、新規産業、行政サービスなど、多くの街づくり分野で活用されるICTは、多くの市民が持っているスマホ・タブレットから、WiFi、スマートテレビ、ICカード、クラウド、さらに、センサーネットワーク、ドローン、ロボットなど多様である。それを使いこなす主体は、従来のような大手ICT企業だけでなく、自治体、地域の町内会や商工会、農業事業者、地場産業事業者、医師会、地域のソフト会社などである。まさに市民レベルでのICT利活用が街づくりの大きな力となっている。
ICTのコモディティ化は急速に進んでいる。大手企業だけでなく、中小企業や市民でもICTを利活用し、十分な成果を出せるようになってきた。全国の先進事例で蓄積されたノウハウは、市民同士やコミュニティ同士のSNSによって情報交換や共有が進み、さらに磨かれつつある。今後は、大型のプログラムや機器の開発は不要であり、小回りの利くプログラムや機器が市民生活の道具として充実していく方向だ。こうしたICTを生活の知恵として使いこなす市民が主役となり、より住みやすく快適な街づくりを加速する時代が始まろうとしている。