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3Xによる行動変容の未来2030経済・社会・技術

3Xがドライブする生活シーン 第1回:移動・生活行動の変化を捉えた時間・空間の有効活用サービス

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2021.8.19

先進技術センター由利昌平

3Xによる行動変容の未来2030

POINT

  • 移動や日常生活行動圏の時空間を有効活用することでライフスタイルをアップデート。
  • デジタルとコミュニケーションによる社会変革であるDXとCXがカギ。
  • 地域のプラットフォーム的な基盤サービスがボランティア活動などの社会活動促進をサポート。

時空間の有効活用を実現する3X

コロナ感染症の拡大を契機として、人々の働き方や暮らし方は大きく変わりました。例えば、リモートワーク(在宅勤務)やオンライン授業は、通勤・通学という移動を減らし、新たな自由時間を創出しました。自宅がワークスペースとなったことで、これまで職場や学校中心であった日常生活の行動圏が自宅周辺の地元地域へと変化しました。慣れ親しんでいる地元地域という生活空間に創出された自由時間を活用することで、子育てや介護がしやすくなった、健康のために地元地域を歩いてみると楽しい新発見があった、また地域でのボランティア活動に初めて参加して、新しい多くの仲間ができたといったさまざまな体験をされた方が多いのではないでしょうか。

さらに、デジタルテクノロジー(DX技術)やコミュニケーションテクロノジー(CX技術)は、通勤・通学、出張などの移動自体を大きく変えようとしています。そもそも移動とは、そのほとんどが移動先において何らかの目的(本源需要)を達成するために派生的に発生する行動(派生需要)です。最近ではその移動時間や移動空間にデジタル技術などを活用し生産的かつ快適な時空間を提供するサービスも出てきました。

ここでは、ポストコロナ(2030年頃)における技術進展を念頭に、①移動の時空間と②リモートワークにより変化した日常生活の行動圏域における時空間という、2つの時空間に焦点をあてて、人々のライフスタイルを変革するサービスとそれを実現するための技術・機能について考えてみたいと思います。

移動の時空間を変える新たなサービスアイデア

最近、移動時間やその空間(電車やバスの乗車空間)を生産的そして快適な空間として活用するための試みが始まっています。JR東日本は、東北・北海道新幹線に、座席でウェブ会議や携帯電話による通話が可能な「リモートワーク推奨車両」※1、東急バスでは「動くシェアオフィス」をコンセプトとした「Satellite Biz Liner」※2の実証実験を行いました。「リモートワーク推奨車両」では、単にオフィス空間のみを提供しているのではなく、周囲への会話漏れを軽減させるための「情報マスキング音」を流し、PCのサブモニターとしてのスマートグラスなども準備されたりしています。

このように移動時間、空間を効果的に活用することで、本源需要と派生需要が連携した新たなサービスの提供を可能としました。現時点では、移動空間である車両などに乗車した時点から、オフィス空間として活用できるというアイデアではありますが、将来的には単にワークスペースとしての機能にとどまらず、CX技術が移動空間をバーチャル会議室や同僚とのコミュニケーション空間にする機能も創出してくれるのではないでしょうか。そうなれば都心から離れた郊外に居住するというライフスタイルを選択する人たちも増えるでしょう。

以上のような通勤交通を例とした時空間の有効活用サービスのアイデア以外にも、5Gが全地域に普及するであろう2030年までには、移動目的地での本源需要の体験価値を高めることができるさまざまなサービスが生まれると考えられます(表1・図1)。離れた場所でも臨場感のある体験やコミュニケーションができるAR/VR技術やデジタルデータの連係が魅力的なサービスを実現します。
表1 本源需要と派生需要が一体化、連携したサービスアイデア
本源需要と派生需要が一体化、連携したサービスアイデア
出所:三菱総合研究所
図1 医療・福祉分野におけるサービスイメージ
医療・福祉分野におけるサービスイメージ
出所:三菱総合研究所

リモートワークにより創出された時空間の有効活用(ボランティア活動を例として)

前述のようにリモートワークなどにより創出された時間は、スポーツ、文化活動、学び直し、ボランティア活動など新しい活動を始めるきっかけとなっています。一方、やってみたいが一歩を踏み出せない人も多いと思います。DX技術とCX技術は、人々の新しい活動への挑戦をサポートするサービスを生み出します。ここではボランティア活動を例に説明したいと思います。

当社が2021年3月に実施したアンケート調査(対象地域は首都圏と近畿圏)によれば、リモートワークにより創出した自由時間をボランティアに費やした人は約20%、将来的に活動してみたいと希望している人を含めると約35%でした。

ボランティア未経験の人は、どのような社会貢献活動が自分にできるだろうか、迷惑をかけないだろうか、さらには事故に巻き込まれないかといった安全・安心面の不安など、行動に移すまでの心理的ハードルがかなり高いかもしれません。

一歩踏み出す道筋を照らし、歩み続けられるようにサポートするプラットフォーム的な基盤サービスがあると良いのではないでしょうか。誰もがボランティア活動に気軽に参加できるためには以下のような9つの機能を有するプラットフォームが必要です(表2・図2)。企業では既に使われているようなクラウドサービスの技術と当該分野にチューニングしたAIなどのDX技術とコミュニケーションを支援するCX技術を組み合わせれば、技術的には実現することは難しくはないでしょう。
表2 地域ボランティア活動を支援するプラットフォームに必要な9つの機能
地域ボランティア活動を支援するプラットフォームに必要な9つの機能
出所:三菱総合研究所
図2 バーチャル見学・体験機能のイメージ
バーチャル見学・体験機能のイメージ
出所:三菱総合研究所
ボランティア活動を例にしましたが、他の活動でも人の行動変容を阻害している要因をしっかりと分析し、必要な機能を盛り込んだ基盤的プラットフォームができれば多くの人が新しい行動に踏み出せます。生活者のニーズや阻害要因は地域により多少ばらつきはありますが多くは共通しています。個別にサービスを作るのではなく、サービスコンテンツを自由に簡単に整備することができる基盤的プラットフォームを、多くのステークフォルダーの英知を結集して共創することにより未来が大きく開けるのではないでしょうか。

このあとの連載コラムでは、「余暇・レクリエーション」と「社会とのつながり・コミュニティ」の2つの分野について、行動変容を促すサービスについて紹介したいと思います。ご期待ください。

※1:JR東日本「新幹線オフィス実証実験 新幹線でリモートワーク」
https://www.jreast.co.jp/shinkansen-office/(閲覧日:2021年7月28日)

※2:東急バスが2021年2月8日に発表
https://www.tokyubus.co.jp/news/002340.html(閲覧日:2021年7月28日)

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