今回が最終回である。まずは、これまでの内容を振り返ってみよう。第1回と第2回では、私たちが過去の延長上でキャリアを構想するのが困難な時代を生きていること、よりよいキャリアを築いていくには「ありたい自分の明確化」が大切であることを確認した。第3回と第4回では、自身の業務への「ジョブ・クラフティング」の適用で自律性が高まる可能性があることと、キャリア実現には会社の研修と自己学習の組み合わせが有効である点をお伝えした。第5回と第6回では、「他者」を巻き込んだ学習が「知」の深化・拡大を効果的にすることを示すとともに、「リベラル・アーツ」をテーマとする学習がVUCAスキルを高めると述べた。第7回は、「正解」のないVUCA時代を生き抜くためのリスキリング(学び直し)の方法について考えてみたい。
しかし今、最も求められているのは、吸収した「知識」を「知恵や見識」に昇華させ、パフォーマンスの向上に有効な学習方法である。
近年の学校教育は「人生を主体的に切り拓くための学び」にシフト※1してきている。また、「探究学習」が小中学校のカリキュラムに取り入れられ、高校では必修科目になるなど、やり方を自分で考えながら学ぶ力を育む機会が広がってきている。しかし、社会人の自学自習には、学校教育に見られるような、体系的で能動的な学びのプログラムが用意されているわけでもなければ、個人に最適な学び方を発見する手助けを行ってくれる指導者もいない。非効率的かつ効果の低い方法でリスキリングを行っていても、それを自覚することは難しい。
それでも、知識習得型のリスキリングはよい教材さえ見つかれば、それを使って学べばよいので方法にさほど工夫の余地はない。例えば、以下のようなTips(ちょっとしたコツ)を押さえておけば取りあえず継続や定着は行える可能性が高い※2。
- 負担なく続けられるほど簡単な目標から始めてまずは習慣化させる
- 行動実態を記録すること(セルフモニタリング)で改善マインドを醸成する
- 既に習慣になっていることの直前に新しい習慣を行う など
しかし今、最も求められているのは、吸収した「知識」を「知恵や見識」に昇華させ、パフォーマンスの向上に有効な学習方法である。