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働き方改革 第1回:ポストコロナ禍の働き方

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2020.4.8

経営イノベーション本部片山進

経営戦略とイノベーション
新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許さない状況にあり、政府の要請も踏まえ、テレワークに踏み切る企業も増えている。大阪商工会議所の調査によると大企業の半数以上がテレワークを実施している※1。また、株式会社パーソル総合研究所の調査※2によればテレワークを実施している従業員は13.2%である。同調査では大企業ほどテレワークが推奨されていると報告されており、IT環境などが整っている大企業を中心にテレワークが普及している様子が見て取れる。

また、緊急対策的に導入が加速されたテレワークではあるが、おおむね好評のようである。アドビシステムズ株式会社が実施したアンケートによると、テレワークを経験したオフィスワーカーのほぼ全員が業務の生産性が上がったと感じており、今後も定期的にテレワークを実施したいと回答した※3。多くのオフィスワーカーがテレワークの良さを感じてしまった以上、新型コロナ騒動収束後も、テレワーク活用促進の流れは不可逆であろう。

東日本大震災を契機にクールビズが浸透したのと同様に、今回の新型コロナ騒動が、テレワーク活用促進の契機となる可能性は大いにある。また、働き方改革の促進、BCP対策、企業競争力強化の視点からもそうあるべきだと考える。
それでは、テレワークを活用した「ポストコロナ禍の働き方」はどう考えればよいのだろうか。近年の企業活動でもますます重要性が高まっている「コミュニケーションを必要とする仕事(会議、打ち合わせ、相談など)」に関して特に考えてみたい。コミュニケーションを大きく対面型(会議など)とオンライン型(ウェブ会議、メールなど)に分けると、対面型のコミュニケーションのコストはオンライン型のコミュニケーションに比べて高い。従って、対面型のコミュニケーションは、そのメリットが最大限に活かせる領域に限定して、極力オンライン型のコミュニケーションに移行することが必要であろう。

対面型コミュニケーションが得意な領域として、「感情交流」「セレンディピティ(偶発的出会い)」の2点が挙げられる。チームメンバー同士が感情的に結びついているからこそ、チームワークが成り立つ。また、セレンディピティが生まれやすいのもリアルな場の特徴である。街の本屋に行くと自分が思ってもいなかった本に出会うのと同様、オフィスにいると、普段接しない人から思ってもいなかった情報が得られたりする。そういった偶発性がちょっとしたアイデアやひらめき、ひいてはイノベーションにつながることは学術的にも知られている。こうした要素を無視してすべてのコミュニケーションをオンライン型に移行すると、中長期的なパフォーマンス低下につながってしまう。

また、オンライン型のコミュニケーションへの移行といっても、相互やり取りの頻度を見極めそれに応じた適切なツールを選択する必要がある。やり取りの頻度を高、中、低と3段階に分けるとすると、典型的には「高:チャット」「中:メール」「低:ファイル共有やワークフロー」が適切なツールであろう。
以上を踏まえ、「ポストコロナ禍の働き方」を実現する上で大切なのが「業務プロセスの抜本的な再設計」「IT投資」「新ツールに対応したコミュニケーションリテラシーの向上」の3点である。
まず上述の通り、近年発達したオンライン型のコミュニケーションツールの事情を鑑み、特にコミュニケーションが必要な業務について、その意義を見直し、適切な手段に変えることである。例えば、多くの企業が実施している定例会議は、情報共有(予算の達成状況、組織の状況など)とチームビルディングの役割がある。両者の役目のうち、情報共有は社内SNSなどで共有し、チームビルディングの機能を別途設計する(飲み会やランチ会を設定する、交流イベントを作る)ことで代替できるかもしれない。

2点目のIT投資については言うまでもないだろう。電子承認システムやTV会議システムなど適切な投資がなければ、オンライン型のコミュニケーションへの移行は実現できない。

最後に、従業員、特に管理職層のコミュニケーションスタイルを変容させない限り、いくらインフラが整っても、いつものやり方(=対面型)のコミュニケーションは変わらないだろう。また、オンライン型のコミュニケーションは、非言語コミュニケーションが少なく、誤解を生みやすいため、言語コミュニケーション能力を一段と磨く必要がある。そのための教育や、実践の機会を提供することが重要だ。

これら3点の施策を連携させながら全体設計をした上で実行し、「ポストコロナ禍の働き方」を実現できた企業は、効率的で危機にも強い組織体制を実現できるであろう。新型コロナウイルス騒動が「災い転じて福となす」となるような仕込みを始めたい。

※1:出所:大阪商工会議所2020/3/12付プレスリリース
http://www.osaka.cci.or.jp/Chousa_Kenkyuu_Iken/press/200312coronavirus.pdf(閲覧日:2020年4月6日)

※2:出所:株式会社パーソル総合研究所 2020/3/23付リリース
https://rc.persol-group.co.jp/news/202003230001.html(閲覧日:2020年4月6日)

※3:出所:アドビシステムズ株式会社2020/3/4付プレスリリース
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202003/20200304_adobe-telework-survey.html(閲覧日:2020年4月6日)

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