コラム

社会・経営課題×DXデジタルトランスフォーメーション

行政DXの実現に向けた第一歩 第1回:デジタル化すべきアナログ事務・手続きの見つけ方

デジタイゼーションへの課題と対応

タグから探す

2022.5.30

公共DX本部千葉昌幸

社会・経営課題×DX

行政DXの実現を阻むアナログ事務・手続き

2020年12月の総務省による自治体DX推進計画策定や、2021年9月のデジタル社会形成基本法施行とデジタル庁発足など、「行政DX」に関する動きが活発化している。当社は行政DXを「デジタル技術およびデータを利活用した受益者(国民・企業・行政機関)本位のサービス改革」と捉えている。その実現には3つのステップ※1があると言われている。すなわち①デジタイゼーション、②デジタライゼーション、③デジタルトランスフォーメーション(真のDX)※2である。

2019年12月に施行された、いわゆる「デジタル手続法」※3でデジタル技術を活用した行政の推進の基本原則「デジタル3原則」が示されている。例えば、②デジタライゼーションについては、自治体で取り組んでいる電子申請・届け出サービスがある。従来は、市民が役所に出向き、窓口で申請書を記載、提出して証書を受け取っていたものを、自宅などから時間を問わず、PC、スマートフォンからインターネットを通じて申請・届け出を可能にした。③デジタルトランスフォーメーションについても、AIチャットボット技術を導入し、市民から寄せられる問い合わせに24時間対応する、といった新たなサービスが、まだ少数ではあるが現れている。しかし、行政事務・手続きにおいて①それまで紙出力で確認、承認していた業務を添付文書にして画面で確認できるようにした、といったデジタイゼーションにとどまっているケースも多く、それが行政DX全体の動きを遅らせている要因となっている。特に市民の直接の窓口となる自治体で、そのように感じる向きも多いのではないだろうか。

本コラムでは行政DXの第一歩であるデジタイゼーションに着目し、アナログのままになっている行政事務・手続きの場面と理由(課題)、その対応方法を考える。なお、対応方法については、長い期間と高いコストが必要となる抜本的な業務改革や新規システム構築ではなく、既存業務やシステムには大きな変更を加えずに、比較的短い期間と低いコストで実現可能な方法を述べる。

デジタル化を検討すべき3つの場面 ─児童手当の申請事例─

自治体における「児童手当の申請」※4を参考に、デジタイゼーションを実現するための課題と対応を検討してみたい。この事務・手続きでは、自治体は市民からの認定申請(紙)を受け付けた後、認定審査を行い、審査結果を通知する。その後は手当の支払いを行うとともに、所管官庁に報告する。図1はこの流れを示したものである。なお、簡略化のため、支払い処理は除いた。
図1 モデルとする事務・手続きフロー
図1 モデルとする事務・手続きフロー
出所:三菱総合研究所
図1に示した各場面でデータがデジタル、アナログそれぞれの形態になっている点に注目し、整理したのが図2である。
図2 データの形態(デジタル⇔アナログ)の変遷
図2 データの形態(デジタル⇔アナログ)の変遷
出所:三菱総合研究所
既存業務やシステムには大きな変更を加えずに比較的短い期間と低いコストでデジタル化を実現するには、図3のようにアナログになっている場面の手続きをいかにしてデジタル化するか、に着目するとよい。
図3 データのデジタル化イメージ
図3 データのデジタル化イメージ
出所: 三菱総合研究所
データがアナログになる場面は事務・手続きの種類や事情により異なるため、根本的な解決策については個別に対応する必要があろう。ただ、「事務・手続き中で取り扱うデータをデジタルのままにする」という前提をおいてみると、すぐにでも対応できることも多い。本シリーズ第2回ではアナログになる場面を図4のように、①外部からの申請・取り込み、②事務・手続き途中での(アナログ)回帰、③外部への提供、の3つに分けて、デジタル化に向けた対応方法について考えていきたい。
図4 デジタル化を検討すべき3つの場面
図4 デジタル化を検討すべき3つの場面
出所: 三菱総合研究所

※1:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会(経済産業省)「DXレポート2(中間取りまとめ)」(2020年12月28日公表)や総務省「令和3年版 情報通信白書」(2021年07月30日発行)

※2:ステップ①:デジタイゼーション:アナログで行っていた業務、作業をデジタルで行えるようにする。また、デジタル度合いを高める。
ステップ②:デジタライゼーション:デジタル化されたことを前提に業務プロセス自体を見直し、利用者にとってより使いやすい、効率的な仕組みに変える。
ステップ③:デジタルトランスフォーメーション(真のDX):各種デジタルデータを活用し、これまでにないサービスを創出する。環境が変わっても即座に柔軟な対応を行うことができる。
各ステップの詳細は当社公共DX本部でまとめた以下の特集も参考にされたい。
「社会課題を解決する公共・金融行政DX」(MRIマンスリーレビュー 2021年7月号)

※3:「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第16号)」(2019年5月31日公布)

※4:内閣府「児童手当制度のご案内」
https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html(閲覧日:2022年4月9日)

関連するサービス・ソリューション

連載一覧

関連するナレッジ・コラム

もっと見る
閉じる

関連するセミナー