コラム

社会・経営課題×DXデジタルトランスフォーメーション

DX時代のデータ活用戦略  第1回:DX推進状況調査にみるデータ活用の実際

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2022.6.30

DX技術本部牛島由美子

磯 光

社会・経営課題×DX

DXはまだ発展途上

本連載のタイトルで「DX時代」と表現したとおり、DXはもはや流行ではなく潮流である。DXはどの企業も当たり前に取り組むべき課題となり、中期経営計画など企業の経営ビジョンや戦略の中で当たり前に登場するワードとなった。とはいうものの、実際のところ企業においてどれくらいDXは進んでいるのだろうか。当社が2021年末に独自に実施したDX推進状況調査の結果をもとにひもといていく。
DX推進状況調査概要
  • 2021年12月実施のWebアンケート調査
  • 売上高100億円超の企業の従業員(派遣・契約社員除く)で、社内のデジタル化・DXの取り組みに何らかの形で関与している1,000人が回答
本調査の中で自社のデジタル化の進展度合いを尋ねている。結果を見ると、図1に示したとおり、組織や複数業務を横断したデジタル化や顧客が得る価値を高めるためのビジネスモデル変革(DX)まで実現しているのは全体の3割程度に過ぎない。これに対し、保有データのデジタル化(デジタイゼーション)や、個別業務単位のデジタル化(デジタライゼーション)にとどまっている企業は7割程度であった。多くの企業がデジタル化・DXにおいて発展途上にあることがうかがえる。
図1 デジタル化の進展度
図1 デジタル化の進展度
注:DX推進状況調査より、回答者所属企業における「デジタル化の進展度について、あてはまる段階をお答えください」という質問に対する回答

出所:三菱総合研究所

社外データ活用のハードルの高さ

ITの進展により個人・企業・社会の活動・行動のデータは増える一方である。ここから新たな価値を見いだし、どれだけ価値を高めることができるかがDX推進の要である。各社のこうした「データ活用」の状況はどうなっているだろうか。

図2にデータ活用に関する回答を示す。「活用・実施しており想定通りの成果が出ている」または「やや成果が出ている」とした回答者に、成果の内容とその割合を聞いたところ、パターン①「自社データの社内活用」が57%であるのに対して、パターン②「社外データの活用」は34%、パターン③「自社データの社外への販売」は18%にとどまっている。
図2  データ活用のパターンと進展度
図2  データ活用のパターンと進展度
注:表内数値はDX推進状況調査より、回答者所属企業が「独自に顧客データを保有・分析し、その結果をマーケティングや商品開発に活用しているか。また、社外のデータを購入するなどして活用したり、自社のデータを販売しているか」という質問に対する回答のうち、「活用・実施しており想定通りの成果が出ている」または「やや成果が出ている」を併せた回答割合。

出所:三菱総合研究所
さらに、パターン②「社外データの活用」に着目し、回答者が抱える課題を見てみる。まだ成果のないグループ(「成果はまだ出ていない」または「計画段階である」と回答)と、成果のあるグループ(「活用・実施しており想定通りの成果が出ている」または「やや成果が出ている」と回答)に分けて集計すると、図3のような結果であった。
図3 社外データ活用において企業が抱える課題
図3 社外データ活用において企業が抱える課題
注:DX推進状況調査より、「社外データの活用時にどのような課題を感じているか」という質問への回答を、社外データの活用について前問で「まだ成果がない」(「成果はまだ出ていない」「計画段階である」)と回答したグループと、「成果がある」(「活用・実施しており想定通りの成果が出ている」「やや成果が出ている」)と回答したグループに分けて集計。

出所:三菱総合研究所
いずれのグループでも、「データ分析人材が不足」が最多となっており、成果の有無に関わらず大きな課題であることがうかがえる。しかし、2番目以降では傾向が異なる。まだ成果のないグループでは「データを活用して何をすればよいかわからない」(23%)、「期待効果・成果が検証できない」(17%)であり、社外データ活用における目的設定に苦慮していることがうかがえる。

一方で、成果のあるグループでは「データの加工が煩雑」(22%)と、検討が進んでいるからこその実作業上の課題が上位に来ており、次点には「適切なデータがない」(20%)が挙げられている。社外データの活用で成果が出ているものの、より良いデータや新たなデータを使いたいと考えても、自社だけで有益な社外データにたどり着くのは困難な状況にあるようだ。

当社にもデータ活用に関する相談は多く寄せられている。最近では保有データの自社利用(内部データ活用)に関する相談よりも、社外などの「外部データ活用」に関する相談が増えている。

この「外部データ活用」の相談には2パターンあり、外部データを自社で活用したいというデータ利用側からのものと、保有データの他事業や他社での活用による新事業・サービスを検討したいというデータ提供側からのものがある。「外部データ活用」は、利用者と提供者、いずれの側にも悩みが多い。外部データを利用したい企業と保有データを外部で活用してもらいたい企業がうまく結びついた成功事例としては、コロナ感染対策における通信会社やスマホアプリサービス事業者の保有する人流データの活用がある※1。ただし、こうした例はまだそれほど多くはない。

本連載を外部データ活用のヒントに

本連載では、成果に結びつく活用が十分進んでいない「外部データ活用」に着目し、外部データ活用を促進する方策を全5回にわたって提示していく予定である。データ利用者側の課題として「データを活用して何をすればよいかわからない」という回答が多く上がっていた。これに対しては外部データの活用事例を、特にマーケティングや新商品開発の場面を想定して紹介する。本連載を通じて、外部データ活用の可能性を感じていただきたい。

加えてデータ提供者側、つまり保有データの社外販売に取り組む際の課題に対しては成功のポイントと検討の進め方を提示する。ぜひともこれから始まる連載をご覧いただき、外部データの活用を前向きに捉え、検討を進めていただければと思う。

※1:政府(厚生労働省、内閣官房)にNTTドコモ・Agoop・ヤフーの3社が人流データを提供した等、多くの場面で人流データが活用されている。

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DX推進状況調査の結果を基にまとめた調査レポートをダウンロードできます。

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