近年、DXやデータ駆動経営という潮流が定着する中で、数多くの企業がデータ活用を競争力の源泉と捉えている。実際当社にも、「自社に蓄積された内部データを活用することで何か新規事業を創出できないか」という相談が寄せられている。
内部データ活用による新規事業創出のポイントは2つある。それは、「ニーズ起点(顧客視点)の発想の取り込み」と「消費者の抵抗感への配慮」である。
1番目の「ニーズ起点の発想の取り込み」について、データ活用はあくまで手段であり、決して目的ではないということを常に意識する必要がある。蓄積したデータを活用することにフォーカスしすぎるとシーズ起点(事業者視点)の発想となり、顧客の関心を得られない事業となってしまう。顧客のどのような課題を解決することが求められているのか、ニーズ起点の発想を前提とすることが重要だ。
2番目の「消費者の抵抗感への配慮」について、図1は利用目的ごとのパーソナルデータの提供意向を聴取した結果である。企業が提供するサービスやアプリケーションの登録・利用にあたり、われわれは生活の中でさまざまなパーソナルデータを提供しており、企業も多くのパーソナルデータを収集している。大規模災害や健康・福祉関連、社会課題解決など公共目的で用いる場合の提供意向は、製品の機能向上やサービス品質の向上などの収益事業に用いる場合に比べて高くなっている。ただし収益事業であっても、消費者自身への経済的なメリットが受けられるなど、何らかのメリットがある場合にも提供意向が高い傾向がある。内部データ、特にパーソナルデータを活用する際には、プライバシー保護などの適切なデータの取り扱いはもちろんのこと、これらの消費者心理を加味することも重要だ。
図1 利用目的ごとのパーソナルデータの提供意向
出所:総務省「令和2年版情報通信白書」を基に三菱総合研究所作成