前節で紹介した通り、ブロックチェーンにはまだ様々な面で懸念が残ります。但し、ブロックチェーン技術には大きな可能性があるのもまた事実です。ブロックチェーンの本質であるネットワーク分散管理インフラストラクチャをうまくビジネスに取り込む動きは、仮想通貨に留まらず、金融業界の様々な領域で加速しています。
例えば、米国の証券取引所ナスダック(Nasdaq)では2015年、ブロックチェーンを取り込んだ未公開株の株式取引システム「Nasdaq Linq」を立ち上げ、12月には実際の取引に成功したと発表しました。これまで非常に複雑で数日を要していた未公開株の取引手続きが、「Nasdaq Linq」により数分で実現できるようになり、その可能性に期待が集まっています。
また、大手金融機関も参画したブロックチェーンに関する研究開発も進んでいます。従来の仕組みを応用しつつ、その最大の特徴でもあり弱点でもある「管理者がいない」という点を改善し特定の管理権限を設定可能にした、「許可型ブロックチェーン」と呼ばれる技術も登場してきており、少しずつ実用化されつつあります。国内では2016年7月、三菱UFJフィナンシャルグループが仮想通貨の管理・決済サービスを提供する米コインベース(Coinbase)社へ出資し、仮想通貨業界への参入を表明するなど、具体的な動きも始まっています。
また、ブロックチェーンの活用の動きは金融業界のみならず、様々な業種へと拡がりを見せ始めています。海外では既に医療や流通、法務などの様々な分野で、新しいサービスが模索されています。特に、権利の所在・移譲を管理するシステムやサービス全般に対して、ブロックチェーンが適合する可能性が高いです。
こうした技術革新をうまくビジネスの場に取り込むことによって、金融・非金融を問わず社会システムを抜本から変革し、これまでにない全く新しい価値観・サービスをもたらす可能性があります。
本コラムは、フィデリティ投信株式会社と当社が共同作成し、「フィデリティDCニュースレター」に連載されたものです。
執筆者
先進データ経営事業本部
篠田徹、
木田幹久、山野高将、
本田えり子、
高橋淳一、
鵜戸口志郎