マンスリーレビュー

2022年2月号

MRIマンスリーレビュー2022年2月号

社会実装論 —実装力を高める「共領域」とは—

研究理事 亀井 信一
近年のカーボンニュートラルに対する関心の高さから、炭素を含まないエネルギー源として、水素が注目されている。水素は、2つの水素原子が結合して水素分子を形成している。電気的に中性な水素原子がなぜくっつくのかは不思議といえば不思議である。

この素朴な問いへ明確に答えてくれたのが、ノーベル賞を2度受賞したライナス・ポーリング博士である。非常に大雑把な表現だが、一対の陽子と電子で構成される水素原子が、もう1つの水素原子の電子を「共有」することにより、安定した水素分子が形成される。

互いに何ら関係がなさそうなもの、さらに言えば本質的に反発しあうものであっても、第三者を共有することにより、一体感をなし安定することは、人間関係でもよくあることだ。

現代日本の閉塞の大きな要因は、細分化された組織の縦割り構造や分断にあると考えている。これを打ち破るには、それらを結び付ける紐帯(ちゅうたい)(共有化の仕組み)が必要であり、これを「共領域」と呼ぶことにした。

より良い社会を実現するためには、イノベーションを社会に実装させ結実させる必要がある。その鍵は、共領域の形成にある。

分断しがちな個をいかに結び付けていくか。ミクロな世界にも学ぶべきヒントがありそうだ。
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