マンスリーレビュー

2022年11月号

MRIマンスリーレビュー2022年11月号

共助で進める「地域共創DX」

常務研究理事 山田 敬喜
第9代米沢藩主の上杉鷹山は江戸時代の名君として知られている。藩政府が手を貸す扶助、近隣社会が互いに助け合う互助、自ら助ける自助の「三助の思想」などを掲げ、財政破綻寸前の米沢藩を再建した。

第35代米国大統領のジョン・F・ケネディは上杉鷹山を信奉し、1961年の就任演説にも影響を与えたとされる。「三助の思想」は今日においても受け継がれており、持続可能な社会の根幹をなしている。

日本は課題解決先進国を目指している。少子高齢化やインフラ老朽化、教育や介護、集落機能維持などの課題を解決するには、地域・組織がつながり合う「デジタル社会」の実現に加え、行政や民間企業の枠を超えた取り組みも欠かせない。その中核は、各主体が保有するデータなどを有機的に連携させて新たなサービスを創出し、それぞれの地域で顕在化している複合的な課題の一体的な解決を目指す「地域共創DX」である。

政府は年末までに「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を策定する。地域間の格差を是正し、地方の魅力をそのままに、都市に負けない利便性と可能性を実現した暁には、稀代の名君も瞠目(どうもく)するに違いない。国の施策やこれまで培ってきた総合知と経験を戦略的に活用する「地域共創DX」に大いに期待したい。
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